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振り返ってみれば

直木賞作家の重松清をご存知だろうか。
前から知ってはいたが、最近本屋で見かけ、まずは直木賞受賞作品の「ビタミンF」を買った。
30代後半をちょっと過ぎて、そろそろ自分の人生の先が見え始めた人たちの話である。あの熱く燃えた青春時代を振り返りつつ、後戻りはできない今の自分を切なく、懐かしく、ちょっと苦々しく、痛みを覚えながら、でも、今の生活、家族を受け入れてちょっぴり疲れを覚えながらも頑張っていこうかという話である。
その後、はまってしまって次々と作品を買ったが、そのなかで「きよしこ」というちょっと変わったタイトルの本を読んで、正直「まいった」そして泣けた。

父親の仕事の関係で小学校5年生ですでに4回もの転校を経験している、吃音のある男の子が主人公である。
このバックグラウンドだけで少年の抱える孤独というものをうかがい知ることができる。少年の言うに言われない心の叫び、つぶやき、そして残酷さが丁寧に描かれいて、彼を取り巻く、幾人もの同級生、そして、大人たち、学校の先生、親、近所の人々。少年の心のすぐ近くにいるようで、遠巻きに見ているような、靴を履いたまま足の裏をかくような、そんなもどかしさから、ちょっとどこを見ているのと肩を揺さぶってしまいたくなる。

でも、振り返ってみれば私も同じことをしてきたと思う。
何にもわからなくて、支離滅裂でどれほど息子を傷つけてきただろう。今だってそうかもしれない。見当違いなことばかり言っているかもしれないと思う。
でも、今、私は心の中で息子には感謝している。このことだけは頭が上がらない。なぜなら私がイエス様と出会い、洗礼を受けたのは、見えざる神のみ手に導かれて、息子が幼稚園に入ったからである。
この本を読んだ後、心がすがすがしくなり、子をいとおしく思い、人に対して優しい気持ちを持ちたいと思い、 大切にしたいと思い、 一人ひとりの一足一足の連続性にある人生は確かに価値があって、歴史があって、かけがえの無いものであること。そして、この少年が今もどこかで人生を送っているような錯覚を覚える。
                     byたぬき

       「生まれる前から、私はあなたにゆだねられました。
             母の胎内にいたときから、あなたは私の神です。」
詩篇22:10

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by covenanty | 2007-10-05 23:32 | 本・映画・ドラマ