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AKB48の輝き GKB47の挫折

「GKB47宣言!」
このキャッチフレーズは政府が今年3月の自殺対策強化月間のキャッチフレーズとしていったん決定したものですが、各方面から厳しい批判を浴びて撤回されました。
政府はGKBを「gate keeper basic の頭文字」とし、47は「47都道府県」を意味すると説明しましたが、アイドルグループAKB48をもじった無意味な言葉遊びと批判されたものです。
自殺対策に取り組む全国の民間団体が抗議声明を出しています。
その中で次のような声が掲載されています。
「自殺対策のキャッチフレーズは目立てばいいという人集めのイベント広報とは違います。その一言で、心が温かくなるような言葉選びをすべきです。」

GKB47の問題をAKB48と比較してみましょう。

AKB48は秋葉原を拠点として活動を始めています。
秋葉原は「アキバ」と略されることがよくあります。
AKBは、この「アキバ」にきれいに一字ずつ対応しています。アルファベットを用いていますが、実際には日本語の「アキバ」そのものを表しているといえるでしょう。

しかもその響きの組み立てがなかなかのものです。
まずはじめのA、ローマ字なら「ア」をあらわす文字です。Aという字を見たとたん、多くの人は頭の中に「ア」の音が明瞭に響くでしょう。
次はKの音でしっかりと締め、最後にBの深いやわらかい響きで終えるのです。
AKBという文字を見ながら、多くの人の頭には「アキバ」、あの不思議な魅力を持った土地の情景が浮かび、あの若い子たちの元気な歌声が響いてくるのです。

ここまでくれば、GKB47がなぜ批判を浴びたか、よくわかるように思います。
まず、言葉だけでは意味が全く取れません。
私は、どうして「ゴールキーパー」(これもGKです)が自殺予防対策に登場するのか不思議に思いました。さらに、Gatekeeperという言葉は「門番」を表しますが、この言葉自体が通信制御用サーバの略称や犯罪予防策の一種としても用いられます。
ともかく「GK」ではまったく意味が取れないのです。さらに最後のBはベーシック(basic)というに至っては、聞く人はおよそ理解不能に陥るでしょう。
アルファベットはわずか26文字です。英単語の頭文字のアルファベットをキャッチコピーに使うとまず失敗します。一つのアルファベットにそれぞれの人が多義的な意味を感じてしまうのです。
特定の専門家向けならともかく、国民的な運動のキャッチフレーズにはおよそ不適切でしょう。

次に言葉の響きです。
Gは胸の奥で深く強く響く音です。使い方を誤ると攻撃や拒絶を表しかねません。その次のKは強い息を喉の奥にぶつけて破裂させる音であり、硬く強くドライな響きです。最後をBでやわらげたとしても「GKB」という言葉の響きは、全体として相当に厳しい感じになっています。
「心の温かさを呼び覚ますような響き」とはかけ離れたものなのです。

日本語は母音を中心に構成されたとても美しい響きの言語です。また多数の表意文字・表音文字を組み合わせた豊かな表現力を持っています。
国民的な運動を展開するなら、それにふさわしい日本語のキャッチフレーズを真摯に求めるべきでしょう。

「わたしは あなたの祈りを聴いた あなたの涙も見た」(第二列王記20章5節から)


参考資料

1.黒川伊保子日本語はなぜ美しいか

2.自殺対策に取り組む全国72の民間団体による「『GKB47』に対する抗議声明
このサイトでは公告の提案もあります。そのキャッチフレーズの一例は次の通りです。
「弱かったのは、
個人ではなく、支える力でした。」

3.内閣府自殺対策サイト
 (相談窓口やゲートキーパーの説明なども掲載されています)

虎猫


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by covenanty | 2012-03-27 19:42 | 政治・経済・社会