カテゴリ:政治・経済・社会( 59 )

私が縁側で涼んでいると、裏の木戸を開けて引退した技師の中井さんがやってこられた。中井さんは私が幾度もお邪魔して現役時代のお話を伺った方だ。2年ほど前に亡くなっていたはずなのに?夢を見ているんだろうか。
でも、中井さんはいつものように、軽く手をあげておっしゃった。
「阿部さん。久しぶりだね。結婚が決まったそうじゃないか。おめでとう。」
「ありがとうございます。中井さんが遺されたノートを研究所の技師の方と一緒に解読しているうちに、その方と・・・。
さあ、これをどうぞ。フィアンセ(婚約者)のお母様が地元名産の『最中(もなか)』を送って下さったのです。ひとりでは食べきれないビッグサイズです。お好きなだけどうぞ。」
中井さんは縁側に腰掛け、冷茶を一口おいしそうに飲むと、『最中』の包みを開けて、4等分して一つを食べ始めた。そしてやおら語りだした。

「今日来たのは、やはりどうしてもあんたには話しかったからだ。原発のことだよ。」
やはりそうだったのか。あれから2年半もたつのに収束のめども立たない。
むしろ隠れていた問題が次々明るみに出るような感じさえ受ける。

「「まずは、なぜ私たちの国が原子力に傾注したのかだ。
原子力の圧倒的なエネルギーだよ。水力発電の黒四ダムは7年の難工事で171名もの殉職者を出した。得られたのは約34万キロワット(kW)にすぎない。
福島第1原発は1号機だけで46万kW、2号機から5号機はそれぞれ78万kW、6号機は110万kWだ。合計すれば468万kW。私たちはこの圧倒的なエネルギーに驚き衝撃を受け、国中に原発を造り続けたのだ。」

「そこでね、まず、電気を発生させる仕組みを確認しておこう。
・水力;ダムにためた水の位置エネルギーを運動エネルギーに変換してタービンを回す。仕組みは単純だが、大きなエネルギーを取り出すには、あんな巨大なダムが必要なのだ。環境の問題から、もはや我国では大規模水力発電の立地はないとされる。
・火力・原子力:単純に言えば、お湯を沸かしてタービンを回す仕組みだ。化石燃料を燃やすのか、ウランの核分裂反応を用いるかの違いに過ぎない。核分裂反応は、自然の中で物質として安定していた秩序を強引に解き放って、エネルギーを得る。リスクが大きいことは想像できるだろう。」

「原発の問題をいくつかにわけて説明しよう。
一つ目はコントロールの難しさだ。
水力は蛇口を締めればすぐ止まる。火力は火を消せば数十分程度で止まる。
原子力は違う。熱が一定の温度を超えると核分裂がおこり、その連鎖反応は止まらない。やかん(原子炉)に入れた燃料は、水を沸騰させるだけでなく、常時適切にコントロールしていないと、やかんを熱で破って外部に流出していく(メルトダウン)。
原子力はこの圧倒的エネルギーをどのようにコントロールするかの戦いなのだ。止めるには冷温停止しかない。
福島では、8つの冷温停止装置の内、7つが電力で動く装置だったため停電で稼働せず、残りひとつは職員が使用方法を知らなかったために結局使用できなかった。
メルトダウンは起こしたがとりあえず止まったのは、幸運な偶然に過ぎない。人間がコントロールした結果ではない。いまだに原子炉内の状態がどうなっているかさえ、わかっていないのだ。」

「二つ目の問題は、事故発生時の危険だ。
原発については、事故発生時のリスクがほかの発電方式と根本的に異なる。影響の範囲が急速にしかも制御できないほど広範にひろがる。
人々が着のみ着のまま避難を余儀なくされた。見当違いな方向へ避難しては別の場所へ動くことさえあった。動かすことのできない病人も無理に動かすしかなかった。避難先で、環境変化に耐えられず亡くなったり(原発関連死)、病が重くなる方も続出した。
 家畜などは打ち棄てるしかなく、現地で死に絶えて白骨化している。一時帰宅した人々が家畜たちの変わり果てた姿を見て、原発反対に動くのは当然のことだろう。
さらに将来にわたる環境への影響、例えば子どもたちなどへの影響はどのようになるのか。甲状腺がんなどの発生が懸念されている。」

「そして原発については大きな事実誤認が二つまかり通っている。
一つは『原発はCO2をださないから地球温暖化対策の切り札になる、地球環境に優しい』というものだ。
原発は、膨大な核分裂エネルギーを用いてお湯を沸かすものだ。技術的な制約から熱効率が悪い。100万キロワット時の発電のさいには、その倍の200万キロワット時もの排熱を発生させ、これを海に流すなどで、地球を直接温暖化している。さらに高レベル放射性廃棄物という、危険な副産物が加わる。
これに対して火力は、技術進歩で熱効率がよくなっており、100万キロワット時の発電のさいの排熱は同量の100万キロワット時に留まっている。CO2排出量こそ毎時4000トン弱だが、全体を比較すれば、いずれが地球環境に優しいのだろうか。」

「原発についてはもう一つの大きな事実誤認は、原発がコスト安、というものだ。いま明らかになってきている様々な費用(たとえば除染費用、汚染水対策)などを精査していけば、現在のコスト見積の問題は明らかになっていくだろう。
逆に火力については、シェールガスなどの新しいエネルギー源をどう活用するか、などのコスト減の道が検討されているではないか。
なによりも原発事故発生時の危険は、人の生死にすら直接かかわる問題だ。たとえコストが安かったとしても、選択すべき道かどうか、慎重に考えないといけない。
もちろん、火力でも水力でも人命の危険はある。但し、火力・水力については人命の危険は設置工事や原料採掘・輸送や発電に携わるプロフェッショナルたちにほぼ限定され、制御は不可能とは言えない。
原発のように、予想もつかないときに広範な人々に緊急に危険が及ぶものではない。」

私はただ圧倒された。
中井さんはお茶を一口飲み、言葉を継いだ。
「技師にとって本当に大切なことが何かわかるかね。技師に限らずおよそプロと言われる人にとって本当に大切なことが何なのか?」
「・・?」
「それはね、自分が向き合う対象への畏れの気持ちだよ。そして感謝の気持ちだ。
技師なら自分の技術ですべてコントロールできるなどと考えてはいけない。科学者なら自然への畏れ、畏敬を忘れてはならない。
私たちが地球を作ったのではないし、私たちが地球を支配しているのでもない。
私たちは、ひとときこの地球に住むことを許されている存在にすぎない。
住まわせていただいていることへの感謝があれば、畏れの気持ちがでてくるはずだ。
いま私たちがすべきは、この過酷事故の真実、その後の私たちの行動を隠すことなく世界に示すことだ。そこから得られる教訓を全世界に発信すべきだ。
そしてこの事故から勇気をもって立ちあがっていくこの国と国民の姿を世界に示すことだ。」

中井さんの話はようやく終わった。
私はやっと口を開くことができた。
「中井さん。また来てくださいますか。」
「何時でも呼んでおくれ。まだまだ落ち着いて眠ることは出来そうもないからね。」
そう言うと、中井さんの姿はふっと消えていた。

そしてお皿には、あのビッグ最中の包装紙だけが残っていた。
そうだ、中井さんは筋金入りの甘党だった。
「中井さん。また来てくださいね、おいしいお茶とお茶菓子を用意しておきますから。」
そう呼びかけてみた。裏の木戸がカタンとなったように思った。

(注)引退した技師中井さんのエピソードについては、以下を参照ください。
明るい高齢化社会(2)『技師の思い出』」

【主な参考文献】
嶋田隆一監修・佐藤義久著 電気のしくみ―発電・送電・電力システム
 (原発と地球環境の問題については、この本の159頁、166頁参照)
安富歩著 原発危機と『東大話法』―傍観者の論理・欺瞞の言語―
広河 隆一 福島 原発と人びと
コリーヌ・ルパージュ著
原発大国の真実: 福島・フランス・ヨーロッパ ポスト原発社会へ向けて
金子勝著原発は火力より高い  
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by covenanty | 2013-10-02 17:40 | 政治・経済・社会

 「虎、病院行くぞ!さっさと支度しろ!」
松ばあさんの割れ鐘のような声
嫁の吉江さんも孫の美樹もくすくす笑っている。
「早く行ってあげてください。」と吉江さん。
「おじいちゃん、いつものおにぎり、今日は私が作ったのよ。」と美樹。
仕方ない。パソコンなどが入ったキャリーバック、美樹が作ってくれた弁当を手に、松ばあさんと一緒に愛車カローラで病院へ。

  「今日はいったい何の用だ?」と松に聞いてみた。
「入院した人が何だか難しい病気で、病院の先生から『東京都から医療費の助成金が出る。』と言われた。虎よ、お前さんも元銀行員だ、役所の手続きなど朝飯前だろう。調べてあげな!」とぶっきらぼうな声。

  患者さんの名前は中山さん。60歳近い男性で、個室で不安げにされていた。
看護師さんが「中山さん、今お話していたボランティアの方ですよ。」と紹介してくださった。
「お世話になります。中山と申します。
今朝がた、病院に伺ったところ、すぐ入院してください、ということで・・。
妻たちが今、実家に戻っていて私一人なのです。病院の手続きも身の回りのことも、どうしようか、と思っていたら、看護師さんが『病院ボランティアさん』をお願いすればよいと教えていただいたのです。」

ここからは松ばあさんの独壇場だ。
「中山さん。どうかご心配なく、手続きとか身の回りの問題はこの松がいたします。あと、中山さんのご病気について、東京都から治療費が出るとのことでしたね。」
「そうです。先生から伺いました。でもどういう手続きをすればよいのか・・。」
「ご心配なく、その道の専門家の山上虎之助という者を連れてきています。」
その道の専門家にされてしまった。やむを得ない。
「山上です。はじめまして。先生からどんなお話があったのでしょうか。」
中山さんは、医師から説明を受けた書類を取り出しながら説明を続ける。
「私の病気は『チャーグ・ストラウス症候群』という珍しい病気だそうです。東京都から医療費が出るそうで」
私はメモを取りながら尋ねた。
「調べてみましょう。また東京都に問い合わせたりしますが、その際に中山さんのお名前やご住所などを伝えても差し支えありませんか?」
「もちろん構いません。あさってには妻も戻ってきます。必要な手続きはさせます。」

すると松ばあさんが書類を取り出す。
「病院ボランティアの契約書です。私たちが患者さんのために必要なことをお手伝いする。ご本人に代わってお役所や外部第三者と連絡を取る。患者さんの個人情報は守りますし、入院関係で必要な限りでしか情報は利用しません。そんな趣旨です。私と山上が署名します。中山さんもご署名ください。この取り扱いを了承する、ということになります。」

松ばあさんが身の回りの手続きなどをしている間に、私は談話室を借りてパソコンを開き、キーワード「チャーグ・ストラウス症候群」を入力した。
厚生労働省の難病情報センターにヒット。
白血球の一種の「好酸球」が急増、細い血管に血管障害(血管炎)を生じる。外部からの悪者の侵入でなく、体内のテロリストが暴れるのだ。筋がよくない。治療も難しそうだ。
全国で年間発症者が100例程度の珍しい病気らしい。ステロイド剤(副腎皮質ホルモン)の治療で概ね完治するが、脳や心臓などに重い障害を生じたり、麻痺などの後遺症もある。発症した人のブログでは、手足のまひに長く苦しんだ人もいるようだ。

国からの補助金は出ないが、東京都のホームページを見ると、都は独自に東京都難病医療費等助成制度を設けている。申請先や、必要書類なども案内されている。
早速、中山さんの住所地の○○区保健センターに電話してみた。「窓口に来ていただければ必要書類をお渡しします。」という。奥様に取りに行っていただく方がよいだろう。
申請に必要な書類は、住民票、健康保険証の写し、課税状況の証明などだ。手続きが進められるよう一覧化した。厚生労働省サイトの病気の説明、患者さんのブログなど参考記事も添えて、プリントアウトした。
まず中山さんにお見せしよう。奥様にも送信できるよう、メールの下書きも作成した。ここまで所要時間20分、まずまずといったところか。

病室に戻ると、松ばあさんが入院手続書類を整えて中山さんに署名いただいている。身の回り品(お箸、コップなど)も整えられ、中山さんはレンタルのパジャマに着替えてさっぱりした様子だ。
私は中山さんに声をかけた。
「中山さん、レンタルパジャマですね。私も入院時に重宝しましたよ。一日420円でタオルも込み、あとパンツだけあればすごせますものね。」
「虎よ、それはいいけど、病気の医療費補助はどうなった?」と松ばあさんの声
「はい、このとおり。」
私は、中山さんと松ばあさんに、作成したばかりの難病医療費助成の手続き一覧と病気の参考資料のプリントを手渡した。
中山さんはびっくりした。
「こんな短い時間で、こんな分かり易い案内を・・」
「中山さん、言ったでしょう!虎、もとい、この山上はこの方面の専門家ですよ。」
私も言葉を継ぐ。
「奥様が明後日に戻られるなら、保健センターで申請の書類を取ってきていただくのがいいと思います。そこでセンターの方のご説明を聞いていただきましょう。不明なことは私がサポートします。奥様にメールなどで連絡されるなら、資料一式もお送りできますよ。」
中山さんの携帯に資料一式を送付し、中山さんから奥さんに連絡されることとなった。

食堂で松ばあさんと弁当を広げた。孫の美樹が作ってくれた五目ごはんのおにぎり。ばあさんの大好物で、病院ボランティアのときは、嫁の吉江さんか孫の美樹が二人分作ってくれる。
ばあさんは大口開けてうまそうにかじりついている。
「どうだ、虎、楽しかったか?また、来るか?」
うなずくしかない。
「患者さんの身の回りの世話をするボランティアは、ちょっと気のまわる人ならすぐできるだろう。特に女性はこんなことはお手の物だよ。
でも、今日みたいに、患者の固有ニーズに柔軟に対応できるのは、虎のような社会経験のある人間のほうが適しているんだ。」
これもまたうなずくしかない。

定年後の時間の使い方としては、結構いいものだ。社会のお役にたっていると実感できる。
自分自身が数か月前に胸膜炎という病気で緊急入院した。一人で留守番しているとき、胸の急な痛みで呼吸も困難になった。松ばあさんが見つけてくれて、タクシーで病院に運び込まれ、一命を取り留めた。そのときに、ばあさんから病院ボランティアの話を聞き、一も二もなく承諾したのだった。
あの心細い思いを知っているからこそ、人の不安や痛みを感ずることができる。こんなふうにして松ばあさんは、一人一人ボランティアの輪を広げて行っている。
中山さんも、全快したらボランティアの輪に加わっていただけるかもしれない。

「松ばあさんよ。あさって中山さんの奥様が病院に来られる時分に、もう一回病院に行ってみるよ。東京都への申請は、しっかりサポートしてあげる。自分の経験から健康保険の手続きなどもお話してみよう。お役にたつかもしれない。」
「ああ、それがいい。そうしてあげな。困ったときはお互い様だ。」

「明るい高齢化社会」シリーズのバックナンバー
「重荷をおろして」の「明るい高齢化社会」シリーズは、高齢者が元気に活動する明るい未来のスケッチです。ご一読ください。

明るい高齢化社会―「子育てお助け隊」実践編[ 2011-02-01 21:47 ]
明るい高齢化社会(その2)「技師の思い出」[ 2011-02-11 21:26 ]
明るい高齢化社会(その3)「老人力」[ 2011-06-17 21:25 ]

彼らは年老いてもなお、実を実らせ、みずみずしく、おい茂っていましょう。
(詩編92編14節)
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by covenanty | 2013-09-10 17:15 | 政治・経済・社会

病院で配られている雑誌にこんな記事がありました。抜粋してご紹介します。
反田篤志ミス防ぐシステムを 他産業から学び構築(内側から見た米国医療2)」
(ロハスメディカル2012年12月号


アメリカの病院の産婦人科で、赤ちゃんの誘拐や取り違えを防ぐための新しいシステムが導入されました。Hugs & Kisses(「抱っこ」と「キッス」)システムと言います。
赤ちゃんとお母さんに同一識別番号のIDチップが入った「タグ」を身に着けてもらいます。赤ちゃんの足首には「Hugs(抱っこ)タグ」、お母さんの手首には「Kisses(キッス)タグ」です。Hugsが付けられた赤ちゃんはコンピューターで位置情報が管理され、例えば赤ちゃんが新生児室から出されると、自動でアラームが鳴ります。赤ちゃんを新生児室から動かせるのは、対応するKissesを持ったお母さんだけです。お母さんが赤ちゃんを抱っこして産婦人科病棟内を移動するなどは自由にできます。しかし、お母さんでも病院に無断で赤ちゃんを産婦人科病棟から連れ出すとアラームが鳴り、他の病棟や階段への扉が自動でロックされるなど、二重三重の防護壁が張られるようになっています。

病院など医療業界では「ミスは人間の注意で防げる」「不注意は悪」という考え方が強く、問題が起これば「ミスをした本人が悪い」といわれるのが普通でした。
この考え方を変えたのは、航空業界や防衛業界など他産業で働いた人です。このような人々の目には医療業界がとてもミスの発生しやすい環境と見えたようです。Hugs & Kissesなどのミス防止技術や理論の多くは航空業界や防衛業界などで発達したものです。
ミスが人の生死に直接かかわるリスクの高さは、医療業界でも航空業界、防衛業界でも変わりありません。他産業で発達した技術や理論を上手に生かし、ミスの起こらない仕組みを作り上げることが強く求められています。

虎猫の感想を一言添えます。
この記事は医療業界について取り上げたものですが、どんな業界でも変わりはありません。
人間は過ちを犯します。過ちの原因を現場にいた人の「不注意・怠慢・不届き」等と責め立てるだけでは問題は解決しません。一人の人が過ちを犯しただけで問題が発生するなら、それはシステムの不備なのです。
ひとりのミス・過ちが大事に至らないように「過ちを犯さない仕組み」を構築したのが、このHugs & Kissesシステムでしょう。さらに「過ちを早期に発見する仕組み」「発見した過ちを早期に是正するシステム」の3本柱が、システム構築の原則とされています。
人の弱さを知りましょう。その弱さをカバーするのは人の知恵です。それでも過ちが防げなければ、過ちを赦すのは神です。

「大祭司は自分自身も弱さを身にまとっているので、無知な人、迷っている人を思いやることができるのです。」(ヘブライ人への手紙第5章第2節:新共同訳)

そのほか参考文献
畑村洋太郎失敗学のすすめ

虎猫
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by covenanty | 2013-06-19 13:37 | 政治・経済・社会

東大阪市は6千もの町工場がひしめく「ものづくり」の町です。
工場の職人さんたちは、大手メーカーなどから「こんな部品をつくってもらえないか」と無理難題を頼まれても、決して「できまへん」「だめですわ」とはいいません。
「どないかします。」(どうにかします。なんとかします。)というのだそうです。
そして、本当にどないかしてしまうのだそうです。
(5月10日付日経新聞1面「春秋」欄)

このような職人さんたちの真摯な努力が、この国のものづくりの基盤を支え競争力の源泉となっています。そして「どないかしてきた」技術の蓄積が会社を発展させているそうです。
もし、あなたが会社の上司や社長で、部下がお客様から頼まれて意気に感じ「どないかします。」とこたえたなら、是非言ってあげてください。
「やってみなはれ!」

【実例】「どないかします」と言っていたら、こうなりました。
株式会社フセラシ
もとは布施螺子という会社でした。布施市(現在の東大阪市)で螺子(ラシ:ねじ)を作っていた会社です。
いまでは国内4工場、海外3工場を擁し、精密ナット・各種圧造・鍛造部品など自動車関連製品・エコ関連製品・特殊建築用複合製品など幅広く製造しています。この会社の精巧な部品がなければハイブリッド車もスマホも商品にならないそうです。
(前掲の日経新聞「春秋」および同社ホームーページより)

高ぶりが来れば恥もまた来る。
知恵はへりくだる者とともにある。
(箴言第11章第2節)

虎猫
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by covenanty | 2013-05-28 21:10 | 政治・経済・社会

「GKB47宣言!」
このキャッチフレーズは政府が今年3月の自殺対策強化月間のキャッチフレーズとしていったん決定したものですが、各方面から厳しい批判を浴びて撤回されました。
政府はGKBを「gate keeper basic の頭文字」とし、47は「47都道府県」を意味すると説明しましたが、アイドルグループAKB48をもじった無意味な言葉遊びと批判されたものです。
自殺対策に取り組む全国の民間団体が抗議声明を出しています。
その中で次のような声が掲載されています。
「自殺対策のキャッチフレーズは目立てばいいという人集めのイベント広報とは違います。その一言で、心が温かくなるような言葉選びをすべきです。」

GKB47の問題をAKB48と比較してみましょう。

AKB48は秋葉原を拠点として活動を始めています。
秋葉原は「アキバ」と略されることがよくあります。
AKBは、この「アキバ」にきれいに一字ずつ対応しています。アルファベットを用いていますが、実際には日本語の「アキバ」そのものを表しているといえるでしょう。

しかもその響きの組み立てがなかなかのものです。
まずはじめのA、ローマ字なら「ア」をあらわす文字です。Aという字を見たとたん、多くの人は頭の中に「ア」の音が明瞭に響くでしょう。
次はKの音でしっかりと締め、最後にBの深いやわらかい響きで終えるのです。
AKBという文字を見ながら、多くの人の頭には「アキバ」、あの不思議な魅力を持った土地の情景が浮かび、あの若い子たちの元気な歌声が響いてくるのです。

ここまでくれば、GKB47がなぜ批判を浴びたか、よくわかるように思います。
まず、言葉だけでは意味が全く取れません。
私は、どうして「ゴールキーパー」(これもGKです)が自殺予防対策に登場するのか不思議に思いました。さらに、Gatekeeperという言葉は「門番」を表しますが、この言葉自体が通信制御用サーバの略称や犯罪予防策の一種としても用いられます。
ともかく「GK」ではまったく意味が取れないのです。さらに最後のBはベーシック(basic)というに至っては、聞く人はおよそ理解不能に陥るでしょう。
アルファベットはわずか26文字です。英単語の頭文字のアルファベットをキャッチコピーに使うとまず失敗します。一つのアルファベットにそれぞれの人が多義的な意味を感じてしまうのです。
特定の専門家向けならともかく、国民的な運動のキャッチフレーズにはおよそ不適切でしょう。

次に言葉の響きです。
Gは胸の奥で深く強く響く音です。使い方を誤ると攻撃や拒絶を表しかねません。その次のKは強い息を喉の奥にぶつけて破裂させる音であり、硬く強くドライな響きです。最後をBでやわらげたとしても「GKB」という言葉の響きは、全体として相当に厳しい感じになっています。
「心の温かさを呼び覚ますような響き」とはかけ離れたものなのです。

日本語は母音を中心に構成されたとても美しい響きの言語です。また多数の表意文字・表音文字を組み合わせた豊かな表現力を持っています。
国民的な運動を展開するなら、それにふさわしい日本語のキャッチフレーズを真摯に求めるべきでしょう。

「わたしは あなたの祈りを聴いた あなたの涙も見た」(第二列王記20章5節から)


参考資料

1.黒川伊保子日本語はなぜ美しいか

2.自殺対策に取り組む全国72の民間団体による「『GKB47』に対する抗議声明
このサイトでは公告の提案もあります。そのキャッチフレーズの一例は次の通りです。
「弱かったのは、
個人ではなく、支える力でした。」

3.内閣府自殺対策サイト
 (相談窓口やゲートキーパーの説明なども掲載されています)

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by covenanty | 2012-03-27 19:42 | 政治・経済・社会

オウム真理教の刑事裁判がすべて終結しました。これを機にマスコミなどではいろいろな論説が現れています。
ここでご紹介する本は、オウム真理教が突然生まれたものではなく、それまでの様々な思想、「ロマン主義・全体主義・原理主義」に根を持つものであると説きます。諸外国にもまた日本にも、オウム同様のおぞましい集団が過去に幾度もあったこと、これからも起こりうることを示しています。

決して読みやすい本ではありません。しかし論旨は明快です。各所に鋭い洞察があり、拾い読みだけでもいろいろと気づかされることがあると思います。
一か所だけ、全体主義について書かれたところを引用します。

「大都市で生活する群衆は、社会や世界はどのように構成されているか、自分は何者なのかということを、明確に理解できない・・・群衆の意識のなかに芽生えるのは、目に見えるものでは世界を十分に理解することができない、という感覚である。・・・
群衆は、実際に目に見えるものを信じないが、自らを包み込んでくれる不可視の統一的体系を提示されると、いとも簡単にその実在を信じ込んでしまう。」
「ゆえに政治家や運動家は、特定の利害ではなく、ある『世界観』、明確には目に見えないものの、個々人がそこに自らの生の基盤があることを実感し、自我を没入させることができるような『世界観』を提示しようとする。
全体主義とは一言でいえば、孤立化した個々の群衆を特定の世界観のなかにすべて融解させてしまおうとする運動なのである。」
「根無し草としての放恣な自由に疲れ、苦悩を抱える群衆は、その心の奥底では強固な束縛こそを希求しているのである。」(本書114~115頁、117頁より抜粋、一部要約して引用)

静かな夜に、ときにはこのような書物を紐解き、その意味をかみしめてみましょう。

全能の神が、人間に悩み迷うことを許しておられるのには、理由があると思います。
主は、人間が自らの意思を放棄し、特定の世界観へ融解・埋没していくような生き方をお許しにはなりません。自立した意思を持つ者として、自らの意思で神の義と神の道に立ち返るようにと、常に呼びかけておられるのです。

オウム真理教の精神史(大田俊寛著)

「私たちは、多くの人のように、神のことばに混ぜ物をして売るようなことはせず、真心から、また神によって、神の御前でキリストにあって語るのです。」(コリント人への手紙第二 第2章第17節)

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by covenanty | 2011-11-29 23:13 | 政治・経済・社会

未来を変えるもの

東日本大震災に対して、私たちは何をすべきでしょうか。
ボランティアなど積極的な活動ができる人は限られるでしょう。社会に広く働きかけることのできる人はさらに限られるでしょう。

でも、どんな人にでもできることがあります。
関心を持って真摯に見ることです。
関連するニュースに注意を払いましょう。
関連の書籍を、立ち読みでも拾い読みでも目を通してみましょう。
インターネットで関連の情報に少し目を留めてください。
共に語り合いましょう。
今この時、関連する情報があふれています。
今を逃せば、やがて人々の興味も関心も薄れ、昔の問題として記憶の隅に追いやられてしまうでしょう。それでは未来を捨てることにさえなりかねません。
今、関心を持って見つめましょう。いつか生かせるときが必ず来ます。私たちが物事を判断し、行動するときの道しるべになっていきます。

例えばこんな本があります。1ページでも目を通してみてください。
世界観が変わります。常識が揺さぶられます。

畑村 洋太郎未曽有と想定外
同     「想定外を想定せよ
加藤 恭子 「私は日本のここが好き
広河 隆一 「福島 原発と人びと

例えば、こんな論説があります。少し引用させていただきます。
池澤 夏樹  「終わりと始まり」(朝日新聞11月1日夕刊3面)
「あの日以来これまで『東日本』で進行してきたことは未来の何かにつながる種なのだ。目を背けては被災者に申し訳ないなどという消極的な理由からでなく、本当にあれは日本が変わる契機なのだ。
だから遠い人も真摯に見ていてほしい。」

人の知恵は、その人の顔を輝かし、その顔の固さを和らげる。伝道者の書第8章第1節より

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by covenanty | 2011-11-11 20:37 | 政治・経済・社会

東京大学の現代史の先生が歴史研究会の高校生を対象に5日間にわたった講義を本にされたものです。ぜひ多くの方に読んでいただきたいと思います。
この国の過去を振り返り、未来を考えるうえで、貴重な示唆があると思います。

一言だけ、この本で大変気になる箇所がありました。
「日本軍ほど自国の軍人を大切にしない軍隊はなかった。」という箇所です。
食料の補給も考えずに兵士を戦線に送り、戦死者よりも餓死者のほうがはるかに多かったところが多数ある。
このような日本軍の体質は、国民の生活にも及んでいた。敗戦間近の国民の摂取カロリーは戦前の6割にまで落ちていたとされます。
ドイツはどうか。国内が徹底的に破壊されていたのに、国民への食糧配給は絶対に減らさないように農業生産に注力し、敗戦前のエネルギー消費量は戦前を上回っていたそうです。

これは、戦時中だけの問題ではありません。あの震災・津波・原子力発電所の事故の後のこの国の指導者たちにもしばしばみられる問題と思われます。
例えば消防、自衛隊、原発の作業員など最前線の人々が、また被災した人々が懸命に災害に向き合っているときに、必要な支援をどこまで真剣に考えてきたでしょうか。安っぽい精神論を持ち出してその場を糊塗してはいなかったでしょうか。

勇士たちをないがしろにする国家は滅びます。国民を大事にしない指導者はその地位を追われます。
この国の中枢にある人々は肝に銘ずるべきであり、私たちひとりひとりが心すべきと思います。

加藤陽子 それでも、日本人は「戦争」を選んだ(2009年7月 朝日出版社)

知恵ある者の叱責を聞くのは、愚かな者の歌を聞くのにまさる。(伝道者の書第7章第5節)

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by covenanty | 2011-08-26 22:25 | 政治・経済・社会

クールビズというのが、おかしな方向に進んでいるように思います。
ビジネスの場の服装である以上、フォーマルな感じは崩さず、なお、自分にも涼しく、人にもさわやかさを感じさせることが必要でしょう。
くだけた服装やリゾートウェアをスーパークールビズというのは、いかがでしょうか。
ジーパンに至っては、工員さんが体を守るため厚手のデニム生地で作ったのです。暑苦しいことこの上もありません。
女性の夏の服装はバラエティに富んでいるのに、男性の夏服が一向に進歩しないのはいかがなものでしょうか。

そこで提案
男性向けのフォーマルで涼しい服装は古今東西いろいろあると思います。探してみませんか。

私の年代なら、アラビアのロレンスのようなかっこいい白のロングにあこがれます。
熱い砂漠の地では、体を覆ってしまうほうが涼しくなるのです。露出部分を多くするだけが能ではありません。
江戸時代の武士の格好もいいではありませんか。腰には刀の代わりに携帯端末!?
暑い日の外出には、アイスジェルを鉢巻きに。「誠」でなく「涼」の字を書きましょう。
剣道部や弓道部の諸君の服装もかっこいいですね。
シンガポールの盛夏の服装も機能的でよさそうです。
中国服はどうでしょう。体を締め付けるのではなく、自分が動く後から服がついてくる感じだそうです。
また、警察、消防、自衛隊など、フォーマルの上に機能性を徹底的に追求した制服を真似てみるのはいかがでしょうか。

もう一つの提案は帽子です。
昔は、夏の外出に帽子をかぶるのは当たり前でした。「帽子をかぶりなさい。日射病になる!」と散々脅されました。
盛夏のボランティアで麦藁帽をかぶってみたところ、実に涼しくなるのに驚きました。
麦藁帽が嫌なら、NHKの韓流ドラマ「トンイ」のような昔の韓国の高官のつば広帽子がなかなか素敵です。阪神タイガースファンなら、甲子園名物の「かち割り氷」を帽子の中に忍ばせましょう。

足元はいかがでしょうか。
暑苦しい靴でなく、草履、高下駄、古代ローマ風サンダル、など、ここも、工夫の余地がありそうです。

扇子一本手に持って、重いかばんは風呂敷に変えて、古今東西の服装の紳士たちが街を闊歩し、オフィスを華やかに変える。
女性「最近の男の人たち、結構やるわね。私たちも負けられないわ!」
外人さん「日本の街はコスプレ・タウン。そうだ、日本行こう!」
有効需要の創出、景気回復間違いなし。
世界に冠たる「クール・ジャパン(かっこいい日本)!」

いつも主にあって喜びなさい。
もう一度言います。喜びなさい。

ピリピ人への手紙第4章第4節

虎猫


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by covenanty | 2011-07-13 21:01 | 政治・経済・社会

エピソード1
満員電車が故障で急に止まってしまいました。車内は息苦しく暑くるしくなってきます。
ついに若い男性2人が怒鳴りあいの喧嘩を始めました。
「なんや!」
「なんやとはなんや!次の駅で降りてもらおうやないか!」
周囲の人は、目をそらし、ひたすら時がたつのを待つばかり。
そのとき、年配の男性が一喝。
「やめなさい!」
若い男性はすごすごと引き下がりました。
恐るべし、老人力!

エピソード2
あるご家庭に寝たきりのおばあさんがいらっしゃいます。
毎日、ひたすらテレビを見ておられます。
一家そろって夕ご飯。そのとき、おばあさんがテレビで見たその日の出来事を解説します。
ともかく一番物知りなのがおばあさん。家の中で一番威張ってらっしゃるそうです。
侮るべからず、老人力!

エピソード3
映画「タイタニック」(1997年)に出演されたあの元気おばあさんを覚えていらっしゃるでしょうか。
グロリア・スチュアートさん。1930年代(!)に美人女優としてならした方で、タイタニックでアカデミー賞助演女優賞にノミネート。演技部門のノミネートとしては最年長記録だそうです。
2010年肺がんのため死去。100歳だったそうです。(ウィキペディアより)

美しきかな、老人力!

彼らは年老いてもなお、実を実らせ、みずみずしく、おい茂っていましょう。(詩編92編14節)

虎猫


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by covenanty | 2011-06-17 21:25 | 政治・経済・社会